パスキーのアクセシビリティ
世界保健機関(WHO)は世界人口の15%、あるいは10億人以上が何らかの障がいを抱えて生活していると見積もっています。多くの国では障がい者(PwD)が社会のあらゆる側面へ完全かつ平等に参加できるようにするため、障がい者に対する差別が法律によって禁止されています。たとえば、国連加盟国193カ国の52の憲法では平等性の保証または障がいに基づく差別の禁止が明記されています。デジタルアクセスは教育、雇用、エンターテインメント(ただし、これらに限らない)を含む社会の多くの側面でますます重要になってきています。認証によってこのようなサービスへプライベートかつ安全なアクセスを確保することも同様に重要になってきています。
テキストメッセージやメールを通じて配布されるセキュリティコードは技術的にはアクセシブルですが、障がい者が支援技術を使用してコードを送信するには高度なスキルと知識が往々にして求められます。FIDOテクノロジーは障がい者の非常に多種多様なニーズに対応できる幅広いオプションをサポートしているため、このプロセスを単純化してアクセシブルな認証を実現するのに最適です。
このセクションはさまざまな障がいを抱えるユーザーがFIDOを利用可能にするための計画を立てるための指針を提供し、ハードウェアメーカーがよりアクセシブルな外部認証器を提供する機会を発見するのにも役立ちます。
ウェブコンテンツアクセシビリティガイドライン(WCAG)
WCAGは、長期にわたるウェブの成長を実現するためのオープンな標準を策定している国際的なコミュニティであるW3Cが策定した網羅的なアクセシビリティガイドライン一式です。WCAGは元々はウェブコンテンツの標準として設計されていましたが、その認知度が高まり、非ウェブ製品に適した指針としても受け入れられるようになりました。WCAGは規範的なものですが、さまざまな国の多くの義務的なアクセシビリティ標準はWCAGを直接参照しているか、WCAGの基準を反映しています。
WCAGには認証に関係する次の2つのセクションが掲載されています。
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WCAGの認証UIの適合性。製品のエクスペリエンスを構成する認証UIは、製品の他の部分とともにWCAGに準じて作成する必要があります。その目標は認証UIが障がい者にとって機能的であり、支援技術との互換性があるという基準を確実に満たすことです。WCAGレベルAAは多くの場合、完全に満たすべき適合レベルです。アクセシブルな設計と開発を サポートする社内のツールやプロセス、不適合を発見して改善策を提示する外部アクセシビリティ監査、さまざまな能力の障がい者による利便性テストなど、企業はさまざまな方法を駆使してWCAGへの適合を達成します。
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WCAG 3.3.8 Accessible Authentication Conformance. There is a proposed Accessible Authentication guideline in WCAG version 2.2 Success Criterion 3.3.8. The guideline states: “For each step in an authentication process that relies on a cognitive function test, at least one other authentication method is available that does not rely on a cognitive function test, or a mechanism is available to assist the user in completing the cognitive function test." ただし、認知機能テストが物体を認識させるもの、あるいはユーザーがウェブサイトに提供したコンテンツを認識させるものである場合を除く」と書かれています。
この例外の物体とコンテンツは画像、テキスト、動画、または音声によって表現される場合があります。メカニズムの例には次が含まれます。
- パスワードマネージャーによるパスワード入力のサポートによって記憶・認知機能テストに対応する
- コピーと貼り付けによって転記・認知機能テストへの対応を支援する
このガイドラインの目的は、サイト固有のパスワードを記憶すること(認知機能テスト)の代替手段を確保することです。WCAGではFIDOが提供するものを含め、このガイドラインに従う方法の例がいくつか提供されています。
WCAGガイドラインに従う方法
- サードパーティーのクレデンシャル・マネージャーによる自動入力を許可する。ウェブサイトは適切にマークアップされたユーザー名(またはメールアドレス)とパスワードのフィールドをサインイン認証に使用する。ユーザーのブラウザ、または組み込みのサードパーティーのクレデンシャル・マネージャー拡張機能は入力の意図を認識し、ユーザー名とパスワードを自動補完できること。
- パスワードの貼り付けを許可する。ウェブサイトは貼り付け機能を妨げないこと。ユーザーがサードパーティーのクレデンシャル・マネージャーを使用して認証資格情報を格納し、コピーし、サインインフォームに直接貼り付け可能であること。
- WebAuthnを使用する。ウェブサイトはWebAuthnを使用し、ユーザーがユーザー名/パスワードの代わりに自身のデバイスを使用して認証できるようにする。ユーザーのデバイスには利用可能な任意のモダリティが採用されている可能性があります。ノートパソコンやスマートフォンで一般的な手段は顔スキャン、指紋、PINです。ウェブサイトは特定の手段の使用を強制しないこと。ユーザーは自身に適した手段をセットアップするものと想定する。
- OAuthを使用する。ウェブサイトはサードパーティープロバイダーのOAuthフレームワークを使用してログインできるようにする。
- 2要素認証を使用する。2要素認証を要求するウェブサイトでは、第2要素にユーザーがボタンを押すだけでタイムベースのトークンを入力できるUSBベースの手段、ユーザーのデバイス上のアプリでスキャンしてアイデンティティを確認できるQRコード、またはユーザーのデバイスに送信される通知などの複数のオプションを使用できるようにし、ユーザーが自身のデバイスの認証メカニズム(ユーザーが定義したPIN、指紋、または顔認証など)を使用してアイデンティティを確認できるようにすること。
W3Cアクセシビリティタスクフォースは以下を明確にしています。
- Providing any current FIDO Authentication methods in addition to the username/password mechanism as an alternative will automatically pass 3.3.8 (assuming FIDO Authentication does not rely on cognitive function testing).
- パスワードレス認証が提供されている場合、そのパスワードレス認証が認知機能テストに依存していない限り、同様にWCAGに準拠しているものとする。