迅速なパスキー導入に対する投資と利点
パスキーのサポートを実装するにあたり、コストと利点を理解しておく必要があります。パスキーをサポートするには先行投資が必要です。初回リリース後は、ユーザーと組織にとって継続的な費用、節約、利点が生じます。
このセクションで解説するコストは概算であり、独自のニーズに合わせて適応できる方向性を示すことを目的としています。一般的にパスキーに関連する人材と技術にかかるコストは、パスキー技術を社内 で構築する場合とソリューションプロバイダーから購入する場合とで大きく変わることはありません。パスキー技術を社内で構築するか購入するかの決定は、新技術の構築または購入に関わる企業全体での方針に依ることが多くなります。
部門横断的な考慮事項
導入戦略では、部門間での予算・人材調整が必要となります。
迅速なパスキー導入を目標とする場合、マーケティング部門はパスキーを宣伝し、ユーザー向けにパスキーに関する十分な情報を提供するキャンペーンを開発する必要があります。マーケティング部門には、パスキーの実装をより大きなビジョンと結びつけ、サービスの安全性を維持する取り組みが期待されます。このブランディングプログラムには長期的なメリットがあり、それに伴う初期費用もかかります。
多くのユーザーが一気にパスキーを導入するため、カスタマーサクセス・サポート部門は、変更中に不明な点があったり、問題が発生したりしたユーザーをサポートできるよう準備する必要があります。
技術獲得アプローチのコスト
このセクションで解説するコストは概算であり、独自のニーズに合わせて適応できる方向性を示すことを目的としています。一般的にパスキーに関連する人材と技術にかかるコストは、パスキー技術を社内で構築する場合と、ソリューションプロバイダーから購入する場合とで大きく変わることはありません。パスキー技術を社内で構築するか、購入するかの決定は、新技術の構築または購入に関わる企業全体での方針に依ることが多いです。
パスキー技術の取得には様々なアプローチがあり、 例えば以下のようなものが挙げられます。
- パスキー技術の社内構築
- ソリューションプロバイダーからの技術購入
- すでに埋没費用として計上されている技術の実装
- 初期はオープンソースのツールとライブラリを使用、その後ソリューションプロバイダーに完全な実装を依頼
最初の2つのアプローチでは同様のコストが発生しますが、3番目は埋没費用になります。例えば、組織が現在、追加のライセンス料金なしでパスキー機能を提供する有料のコンシューマーアイデンティテ ィおよびアクセス管理 (CIAM) のシステムを使用している場合、3番目のアプローチが可能です。CIAMプロバイダーがあらゆる業務要件に対応できる場合、パスキーにCIAMシステムを使用するとコスト削減につながる可能性があります。
ソリューションプロバイダーを探すには、「FIDO認定ショーケース」にアクセスするか、ネットで「パスキーソリューションプロバイダー」と検索してください。
すべてのパスキープログラムの3つのフェーズ
- 「立ち上げ」はパスキーの利用が開始されるまでの時間です。
- 「業務目標の達成」は立ち上げ後から業務目標を達成する までにかかる時間です。
- 「継続的な使用」は事業目標の達成後に始まります。
立ち上げと業務目標達成までにかかるコスト
この展開戦略では通常、複数の役割があり、その中にはプログラムに常勤で働く者と、数年間非常勤で働く者が含まれます。よくある役割の例を以下に示します。
- コンテンツ戦略
- カスタマーサクセス・サポート
- エンジニアリング
- マーケティング
- プログラム管理
- 製品管理
- ユーザーエクスペリエンスのデザイン
- 利便性に関するリサーチ
組織は雇用者1人あたりにかかる年間平均総費用を把握しています。これは各組織と各部門ごとに異なります。この導入戦略の実行に必要な 人件費の概算を算出するには、雇用者1人あたりの年間平均総費用を掛けます。
(雇用者の総勤続年数) x (雇用者1人当たりの年間平均総費用) = 人件費の概算
部門 | 人数 | 勤務形態 | 月 | 年 |
---|---|---|---|---|
コンテンツ戦略 | 1 | 非常勤 | 12 | 0.5 |
カスタマーサクセス・サポート | 1 | 非常勤 | 6 | 0.25 |
ユーザーエクスペリエンスのデザイン | 1 | 常勤 | 24 | 2 |
利便性に関するリサーチ | 1 | 常勤 | 12 | 1 |
エンジニアリング | 2 | 常勤 | 24 | 4 |
マーケティング | 1 | 常勤 | 12 | 1 |
プログラム管理 | 1 | 常勤 | 24 | 2 |
製品管理 | 1 | 常勤 | 24 | 2 |
継続的コスト
初回リリースと業務目標の達成後、組織はパスキーをサービスのコードベースの一部として統合し、パスキーをサービスの他の領域と同様に扱う必要があります。チームは、継続してパスキーに時間を費やす必要はありません。プロダクトマネージャーとリーダーは、コードベースの機能強化に関する優先順位を決定する必要があります。
これを踏まえて、検討すべき優先事項を以下に示します。
APIまたは SaaSソリューションを提供するベンダーを活用する予定の場合:
技術 | コストの割合 |
---|---|
FIDO認定サーバー | 10% |
SaaSソリューションを提供するベンダー | 90% |
ベンダーを活用しない場合:
技術 | コストの割合 |
---|---|
FIDO認定サーバー | 30% |
計算 / 保存 / 転送 | 70% |
「認証手段に関するインベントリ、コスト、およびユーザーエクスペリエンスの分析」ワークシートには、認証インベントリ、コスト分析、およびユーザーエクスペリエンス分析が含まれます。ワークシートには、2つのタブがあります。1つはサンプルデータを含み、もう1つは空白です。空白のタブは、独自のデータを入力するのに使用します。
⤓エクセルファイルをダウンロード
passkey-worksheet-authentication-method-inventory-costs-and-user-experience-analysis.xlsx
継続的な利点
パスキーのサポートを実装する利点は、それを使用するユーザーの数に直接比例します。
パスキーの使用増加に伴う利点には、以下のようなものが挙げられます。
- エンドユーザーエクスペリエンスの向上
- より高いサインイン成功率
- より迅速なサインイン
- 事業の向上
- フィッシング、クレデンシャル・スタッフィング(漏洩したアカウント資格情報の悪用)、アタックサーフェスの減少
- カゴ落ち率(カート放棄率)の低下
- アカウント回復時におけるパスワード再設定の必要性の低下
- ユーザーサポートの必要性の減少
- ユーザーロイヤルティとユーザー維持の向上
- 以下の項目に関連するコストの削減
- 悪意ある行為者に対するリアルタイムの監視と防御
- 従来の認証ソリューションの継続的な要塞化
- パスワードを忘れた場合のアカウントロックアウトに起因するアカウントリセット
- 認証に関連するSMS OPTのための送信料コストの削減
- 重要なコンバージョンパスで離脱するユーザーの減少
その他の認証手段と比較したパスキーのコストと利点